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【脳転移発覚の前兆11】車の運転が下手になる

最近、高齢者の自動車事故のニュースをよく見るようになりました。

アクセルとブレーキを間違えた、道路を逆走するなどといった事故は、これからもどんどん増えていくのではないでしょうか。

かつては、完全に別世界での出来事であり、私にはいっさい関係の無いことだと思っていましたが、下手をすると、私の父もそんな事故を起こしかねない状況となっていました。

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運転が上手だった父

父は、もともと運動神経がいいからか、運転も上手でした。

仕事をしている時は、ほぼ毎日運転していましたが、それでも免許証はずっとゴールド免許でした。

そもそも、ゴールド免許はペーパードライバーでもとれますし、運転が上手いという基準も人によって異なるとは思います。

ただ、父は、視野が広いというか、感覚が鋭かったと思います。

無茶な運転はしませんでしたが、仕事上、急いで運転しなければならないこともあったはずです。しかし、警察につかまったり、事故を起こしたりしたこともありません。車のメンテナンスなどにもかなり気を配っていたので、常に未然の事故防止に努めていたと思います。

ちなみに、私もゴールド免許です。

運転が下手すぎるので、コソコソ走っているだけの産物ですが。父の運転は、そういった私の運転とは違うものでした。今思うと、父の運転からはたくさんのものを学ばせてもらいました。

父が元気なうちに、ちゃんと教えてもらっておけばなと、しみじみ思います。

あり得ない運転をしていることに気づく

脳腫瘍が発覚する前には、車の運転をすること機会はかなり減っていましたが、ある時、父と一緒に車に乗ることがありました。

私は、父と車に乗るときは基本的に運転しません。下手だからです。

私のように運転に自信のない人間は、家族といえども人前で運転することがものすごく嫌なんです。普通でも下手なのに、人を乗せるとその下手さが10倍くらいに膨れ上がります。家族や親しい人以外になると20倍くらい下手になりますね。

そういうわけで、父に運転してもらっていたのですが、この日は父の運転が明らかにおかしいことに気づきました。

1.駐車が下手すぎる

まず、意図する場所に車を停められないのです。

トイレ休憩するため、高速道路のパーキングエリアに入ることになったのですが、トイレとは明らかに遠い場所に車を停めたのです。誰も停めていない、端の方の駐車スペースです。

父は、「間違えた」と言っていましたが、そんな間違いあるはずがありません。

しかも、車は白線に収まっておらず、まるで夜のコンビニたむろする不良たちの車のように、白線に対して斜めに車を停めているのです。

そもそも、以前の父なら、可能な限りトイレに近いところに車を停めようとしていたはずです。

そんなことすら、考えられなくなっていたのか、それとも、混み合う駐車場に停められる自信が無いと、すでに自分の変化を自覚していたからなんでしょうか。

もちろん、当時は、父に脳腫瘍が発生していることなど微塵にも頭にないときです。

何ともいえない不安を抱いた私でしたが、「父はきっと眠たかったのだ」という結論を出し、この時は自分を納得させました。

2.急な減速が続く

パーキングを出てからしばらく走っていると、次は、父の運転の危なっかしさに気が付きました。

やたらと急な減速をするのです。

前方の車との車間距離は、十分にとって運転していました。これは、以前の父と同様です。

しかし、前の車が減速しても、父はスピードを緩めないのです。そして、ぶつかりそうになったと思ったら、急に減速をするのです。それを何度も繰り返すので、隣に乗っている私はたまったものではありません。

「危ない!」と何度叫んだことか。

自動車教習所の車には、助手席にも教官が踏めるブレーキがありますが、これほどそれが欲しいと思ったことはありません。

前の車にぶつかりそうになるたびに、助手席に座っていた私は、ありもしないブレーキを踏む動作をしてしまいました。実際にこの状況に陥ると、本当にこんな動作をしてしまうんです。足がクタクタになりますよ。

父の状態をたとえると、まるで居眠り運転をしているような様子でした。前の車にぶつかりそうになるまでうたた寝をして、はっと気づいてブレーキを踏むような感じです。

実際、当時の父は注意が散漫になっていたので、前の車以外のところに注意がすぐに飛んで、居眠り運転と変わらないような行動を取るようになっていたのだと思います。高速道路でスピードが出ているだけに、相当の恐怖がありますよ。

運転技術の変化は見逃せないサイン

以上、「駐車が下手」「急な減速」の2つが、父に運転に現れた現象です。

とくに、急な減速をしだしてからは、さすがに交代して私が運転しました。

人前で運転することを極端に嫌う私ですが、これ以上、父に運転はさせることはできませんでした。それくらいに恐怖を感じる体験だったのです。また、この日以降、父は一切運転していません。すぐに脳転移が見つかったからです。

父にみられた運転の変化は、2つだけとなりましたが、もし私が交代しなければもっと出てきていたはずです。それこそ、冒頭で触れた、アクセルとブレーキの踏み間違えや、逆走も十分に起こっていたと思います。

そういう意味では、2つの異変だけで抑えられて、本当に良かったと思っています。今考えれば、1つ目の異変であった、駐車の仕方に変化が出た時点で交代すべきではあったのですが。やはり、恐怖を感じなれければ、人間は行動に移せないということなのでしょうか。大きな反省です。

もともと運転に自信が無い人は要注意!

運転に影響がでた場合は、自分の命だけではなく、他者にも迷惑をかけかねません。

あのまま父が運転を続けていたらと思うと、想像しただけでも本当にゾッとします。遅かれ早かれ、事故は確実に起きていたと思います。それこそ、病気どころの話ではありませんね。

父の場合は、運転技術に明らかな異変があったので、私がそれに気づくことができ、なんとか未然に事故を防ぐことができました。つまり、「上手い」から「下手」の差が顕著であったから、早く気付けたのです。

しかし、私のように運転が下手な者が、脳に異常を抱えながらも運転していたらどうなっていたでしょうか。同乗者がいても、「この人は下手だからこんなものか」と思われてしまい、異変の発見が遅れてしまうかもしれませんね。

普段でも、自分では普通に運転しているつもりなに、頻繁に「危ない」と同乗者からは言われてしますからね。

いずれにせよ、脳腫瘍であれ、認知症であれ、睡眠時無呼吸症候群であれ、どんな病気であっても体に異変を抱えながらの運転は危険です。本人では気づけていない場合もあるので、周りの方がどれだけ対応できるかにかかっています。

同乗してみれば、すぐに気づけると思います。ただ、気付いたときの恐怖は、これまた言葉にできないものがあるのですが。