父に発生していた転移性脳腫瘍は、父の性格そのものにも変化を与えていました。
これは、前回のブログで述べた頭痛のように、分かりやすいサインが無いため、極めて気付きにくい症状でした。
肺がんの脳転移があると分かってから、ようやく、それが父の性格に影響を与えていたのかと感じたくらいです。
それでも、注意深く観察することで、見つけることができない兆候でもないと思います。あくまでも、今だからこそいえることなのですが。
もともとの父の性格
元来、父の性格はやや短期なところがありました。怒鳴ったり暴力を振るったりするわけではありません。そもそも、そんなことは絶対にしない人です。
脳腫瘍が原因で、自身の行動が自制することができなくなり、際限なくアルコールを摂取するようになろうとも、暴力的になることは絶対にありませんでした。そういった意味での「攻撃的」な短期ではないです。
しかし、イライラはよくしていました。私や母親があまりにもおっとりした性格だったため、我々のろまな行動についてよくイライラし、小言を漏らしていました。
頭が切れてフットワークも軽い人だったが故に、超マイペースの我々の動きは余計にイライラしていたのでしょう。
ところが、肺がんの脳転移が見つかる数カ月前頃には、イライラすることがほとんど無くなっていました。本当に穏やかな性格になっていたのです。
別人とまでは言いませんが、小言を言うであろうタイミングでも何も言わなくなり、明らかに以前の父とは異なる性格を示すようになっていたのです。
穏やかな父を見ながら、私と母は「父さんも丸くなったな」と言って感心していたほどです。もちろん、加齢で落ち着き始めたと言うこともできるかもしれません。
しかし、がんの脳転移に限って言えば、こういった考えは大きな落とし穴でもあると思います。
逆のパターンもある
父の場合は、短気な性格から穏やかな性格へと変わっていきましたが、医者によるとその逆もあるそうです。もの静かだった人が、怒り出すようになったりするのです。
認知症などでも見られる傾向だそうで、これは家族に大きなショックを与えるそうです。
確かに、いつもニコニコしていた人が、突然怒鳴りだしたり悪態をついたりしだしたら、相当ショックを受けそうです。
どうせなら、私の父のように、上記の傾向とは異なる方が精神的には楽かもしれません。どちらにせよ、脳の病であることに違いは無いので、看過することはできないのですが。
なぜ性格が変化するのか
父の性格に影響を与えていたのは、完全に前頭葉の腫瘍が原因だったと考えられます。
前頭葉は、思考力や想像力など、人間らしさを司る脳です。これまでのブログでも書いてきたことですが、前頭葉に転移した腫瘍によって、道に迷ったり、お酒を飲み続けたり、YouTubeを大音音量で聞き続けたりなど、父の行動には明らかな異常が現れていたのです。
性格の変化も、この前頭葉が大きく影響していたのです。
私が父を見て得た実感としては、短気な性格から穏やかな性格に代わったというよりは、身の回りのことに無関心になってしまったようにも思えます。
実際、ボーっとしている時間が増えましたし、面倒事なども行わなくなりました。
ノロマな私たちに指摘するのも面倒臭くなっていたのでしょう。それとも、ノロマなことをしているとさえおもわなくなってしまっていたのか。
いずれにせよ、この性格の変化は、父に現れた様々な変化の一端に過ぎなかったのだと思います。
性格の変化は気づきにくい
冒頭でも触れたとおり、性格の変化は、他に現れる脳の顕著な症状とは異なり、非常に気づきにくい症状だと思います。とくに、一緒に住んでいる家族は、近くで日々接しているだけに、少しずつ変化してく症状には気づきにくくなると思います。
実際、私がそうでした。父の行動が以前と比べてと明らかに違うのに、私は全く深刻に受け止めていなかったのです。年に数回帰省してくる兄妹に指摘されて、改めて父への変化に気づくことばかりなのです。
脳腫瘍を患ってからかなりの時間が経った今でもさえも、こういったことは頻繁にあります。いつも反省ばかりです。
転移性脳腫瘍に限らず、身内の容態の変化にいち早く対応できるのは、一緒に住んでいる家族しかいません。
責任は重大と思いますし、それだけに悔しい思いもします。そう考えると、損な役回りですね。
まとめ
脳腫瘍など、脳の病気が性格に変化が現れた場合には、性格以外の変化も現れている可能性があります。
無気力になったり、思考力が低下していたりすることなどです。こういった症状も伴っている場合は、要注意です。
多くの場合は、年齢を重ねると共に精神的に落ち着いている場合だとは思います。しかし、すぐにそうとは決めつけず、一度、全体的な様子を確認してみることも重要だと思います。
また、肺がんや乳がんといった脳に転移しやすい癌の経験のある方は脳転移を疑うことが重要ですし、そうでない方であっても、他の脳の病気が疑われます。脳の病気によって、身内が別人のように変化していくことは、本当に辛いものがあります。
少しでも早く見つけることができれば、それだけ症状も食い止めることができるはずなので、今一度、家族の様子を見返してみてはどうでしょうか。