現代社会において、パソコンや携帯電話(スマートフォン)は必須のツールであると言っても過言ではないと思います。
それらが使えなくなる生活なんて、考えられないなではないでしょうか。
私にとっても、とくに、スマホについては無くてはならないものです。(冷静に振り返ってみると、インターネットをするためだけの道具に過ぎませんが。)生活の大部分がスマホに支配されているような状態です。
なんとも情けない限りですが、仕事でも無くてはならない必須アイテムなんです。
ところが、私の父は、突然パソコンや携帯電話が使えなくなってしまいました。もちろん、本ブログの主題である、肺がんによる転移性脳腫瘍がその原因です。
父とパソコン
父は、年の割には、パソコンをよく使っていたほうだと思います。
とはいえ、主にワープロソフト(Ward)やメールソフトを使うばかりでしたが、分からないことは積極的に学ぼうとしていました。
実際、うっとうしいくらいに私にもよく質問していました。
タイピングも、ブラインドタッチとまではいきませんが、それなりの速さで打てていました。父なりに頑張って修得したのでしょう。
パソコン・携帯電話の調子が悪いと言い出す
脳転移が発覚する数ヶ月程前から、パソコンの調子が悪いと言い出しました。
ところが、確認してみてもどこにもおかしいところが見当たりません。
しかし、父は新しいパソコンを買わなくてはいけないと言うほどに困っているようでした。お金のかかる話だし、困ったなあと、私も簡単に考えていました。
ところが、携帯の調子も悪いと言い出しました。父の携帯電話は、かなり古いガラケーです。
これだけ古くては、そんなこともあるのかなと簡単に思っていましたが、こちらも確認してみると、どこも壊れていないようです。
今考えてみると、パソコンと携帯の2つが同時に壊れてしまうことなど、なかなか有り得ないことだと思います。
しかし、それが父に異常が出始めているという、見逃せないサインであることに、全く気づいていませんでした。
もちろん、父自身も、自分に異変が起きているなんてことは全く思っていません。
メールの誤送信とその内容
パソコン・携帯の調子が悪いと言い出してからしばらくすると、その状況はさらに深刻化していきました。
明らかにおかしいと思いはじめたのが、メールの誤送信です。
父が送信したメールの宛先欄(TO欄)には、たくさんの宛先が挿入されていました。明らかに、間違えて入れてしまったアドレスを消せず、そのまま送信してしまった様子でした。
しかも、本文は空でした。その代わりに、件名欄に本文として書きたかったのであろう文章をつらつらと書いていたのです。こんなメールを、たくさんの人に送ってしまったのです。もう、カオス状況ですね。今思い出しても恐ろしいです。
これを見たときは、さすがに焦りました。認知症でもで始めたのかと、父に異変が起こっていると考え出したのがこの時です。
ところが、「もしかすると、偶然であった可能性もある」という考えも湧きだし、ついつい様子を見てしまいます。
認知症であっても、すぐに病院に連れて行くべきなのですが、多分大丈夫だろうと高を括って様子見してしまっていたのです。
これは、いつまで経っても改善されない、私の悪い癖です。病気かもしれないという現実から、目を背けたいという行動の表れかもしれません。
キーボードさえ使えなくなった
脳転移が見つかる直前の状態になると、父はもう、パソコンでYouTubeしか見なくなりました。
キーボードさえ使えなくなってしまったのです。
なお、YouTubeについては、開くことさえできれば、おススメ動画の紹介などが出てくるので、キーボードを使わなくても楽しむことができます。
そのため、携帯電話でのメールも、一切使えなく(使わなく)なってしまいました。
そうなると、電話で連絡を取ろうとします。しかし、間違えて意図しない人にかけてしまうことが増えてきました。
これは、父の症状と併せて、いろんな意味で結構焦りました。
使えないのに手元に置きたい携帯電話
脳転移が見つかってからは、直ぐに手術が必要だということで、入院することになりました。(手術や入院の詳しい内容については、また改めて書きますね)
入院中は、とにかく携帯電話を持ってきてくれと言っていました。この時には、まともに使うことさえできなくなっていたにも関わらず、要求してくるのです。
自分がうまく携帯電話を使えなくなってしまっていることは、この時には父自身も理解しているようでした。それでも、手元に置いておかないと不安だったのでしょう。
しかし、渡してしまうと誰に電話をかけてしまうのか分からないので、非常に怖いものがあったのも事実です。結局は渡してあげましたが。
状態が悪化して寝たきりとなってしまった今では、携帯のことすら言わなくなってしまいました。もう、父には必要のないアイテムに成り下がりました。
パソコンも同じですね。それはそれで、悲しいものがあります。メールの誤送信ができるくらいであれば、まだまだ元気ということですね。
パソコン・携帯を使えなくなった理由
あくまでも、私個人で行った確認ですが、当時の父の記憶力には大きな問題が無かったように思います。つまり、父のおかしな行動の原因は、前頭葉の影響によるものであったと考えられます。
例えば、キーボードを使えなくなった理由は、文字入力する方法を忘れてしまったというわけではなく、文章を考えることができなくなったのだと思います。
前頭葉に問題が発生すると、論理的に物事を組み立てられなくなるといわれています。そのため、文章作成には、その変化が顕著にあらわれるのだと思います。
今、こうして駄文まみれのブログを書いている私でさえ、少ない脳みそをフル回転させねばならず、結構疲れますからね。
もちろん、厳密には、記憶力に全く問題が無かったというわけではなかったと思います。
実際、物忘れは、確かに増えていたと思います。しかし、ちゃんと思い出すことはできていたのです。
当時、私は認知症を疑っていたので、とくに短期記憶に影響がでていないか、頻繁にチェックしていました。たとえば、「昨日の夕飯は何だったか?」、「今日の日付は?」などはよくチェックしていました。あまりやりすぎると、嫌がられますが。
ただ、集中力や注意力は著しく低下していました。
まるで、発達障害の1つであるADHD(注意欠陥・多動性障害)のように、何かをしていても、他の事に注意が向いてしまいがちで、全ての事が中途半端になっていたように思います。
こんな状態では、文を考えたり、メールを送ったりなどの作業はできるわけがありません。
もちろん、認知症でも同じような症状が出るのかもしれません。あくまでも、父に前頭葉にあらわへた脳腫瘍の症状の1例です。
まとめ
パソコンや携帯電話は、もはや生活必需品といえます。
誰でも持っているといえることからも、これらを手がかりにすることで、変化は見つけやすくなると思います。
難しいのは記憶力です。父に明らかな記憶の問題が見つかれば、すぐに病気だと気づけたかもしれません(希望的観測をしがちな私なので、実際にそうなっても見逃しそうですが)。
父にはなまじ記憶力があったため、認知症ではなさそうだと楽観的に考え、状態を悪化させてしまいました。
記憶力があっても不安な場合は、文がちゃんと作れるかを確認してみるのもいいかもしれません。認知症であっても、文字が書けなくなったりするみたいですからね。