小脳と前頭葉に肺がんの転移性脳腫瘍が発生した父ですが、とりあえずは、無事に手術やら検査は終わりました。
合併症の脳内出血が発生したり、腫瘍を取り出せずにリザーバーチューブを設置する手術になったりということもありましたが、まずは命を繋げたことにホッとしました。
もちろん、依然として余命が半年であることは変わらないのですが。
しかし、まだ脳の治療は終わっていません。ガンマナイフ治療が残っていたのです。
放射線治療をするのは分かっていた
父に脳腫瘍が発生した時点で、放射線治療を行うことは分かっていました。
そもそも、腫瘍が2つともゴルフボールくらいの大きさがあったので、外科手術などができるとは思っておらず、放射線治療くらいしかできないだろうと思っていたからです。
結果的には、手術をして小脳の腫瘍だけは取り出すことができたのですが、今となっては本当に幸いでした。
前頭葉に腫瘍が残っているのは確かに残念ではありますが、脳幹に近い小脳の腫瘍が残っていることを考えると、本当に恐ろしいからです。
どんな放射線治療を行うのか不安だった
放射線治療を行うことは前述の通り予想はしていましたが、不安もありました。
特に、全脳照射については、ネットで調べてみると、認知症などを併発するとあったので、実はこれはあまりやってほしくないと考えていました。
ただでさえ、前頭葉の腫瘍の影響で、認知症のような症状がでている状態でしたので、なおさらです。
そのため、医師からこの全脳照射だけは提案されたくないと思っていました。
私の性格上、医師からの提案に反論するなんてことはできないからです。
しかし、結果的にはガンマナイフという治療を提案されました。
これは、全脳照射と比べて副作用も少ない治療ですし、本当に有難かったですね。
ガンマナイフとは
このガンマナイフという治療法は、ガンマ線の細かいビームをレンズの焦点のように病巣部(腫瘍)のみに集中照射する方法です。
そのため、照射を受けた腫瘍のみがその影響を受けて徐々に凝固・壊死するのであって、頭皮や、骨、脳、血管、神経などの影響は最小限に抑えられます。
実際、全脳照射による副作用の懸念から、現在はこのガンマナイフ治療が実施されることが多いようです。
このように、とりあえずは、副作用の心配はなくなりました。
あとは、父のような大きい腫瘍に効果があるのかという心配はありました。
ガンマナイフの実際の治療
ガンマナイフ治療は、腫瘍の摘出手術等を行った病院では設備が整っていなかったため、別の病院へ転院することになりました。
具体的には、2泊3日の転院でした。
外科手術を受けた病院からガンマナイフができる病院へと移り、治療が終わるとまた元の病院へ戻ってくるという流れです。
ただそれだけのことですが、いちいち入退院の手続きが必要となり、結構面倒です。
1日目:転院
入院日です。事前に検査などを行ったようですが、実際に父がどんな検査をしたのかは覚えていません。
ただ、転院とはいえ別の病院に入院なので、家族側としては、いろいろと準備するものがあって大変でした。
基本的な入院セットである着替えやタオル、保険証などは必要です。短い入院ではありますが、こういった準備はなかなか面倒です。
2日目:治療当日
ガンマナイフ治療当日です。
治療室に移動すると、治療部位にフレームを付けられます。
頭部に4カ所麻酔を行い、その4カ所にスクリューでフレームを固定されるのです。
このフレーム、なかなか見ごたえがありませんか。絶対に頭部は動かさないようにするためですね。
フレームを装着すると、造影剤を使ったMRI撮影を行います。気分が悪くなることもあるそうなので、注意が必要です。
MRI撮影が終わると、一旦病室に戻ります。外れることはないので、歩くことができますし、食事も可能です。ただ、フレームが邪魔で、少し食べにくいそうですが。
午後になると、ついに治療が開始されます。治療時間は、2~3時間程度と言われていましたが、父の場合もそれくらいだったと思います。
なお、治療中は、好きな音楽を聴くことができます。自分の好きなCDを持って行ってもいいそうです。
ちなみに、父は何を思ったのか、「抜刀隊」を聞きたいと言い出しました。
脳腫瘍が発生したこともありますが、父が抜刀隊を聞いているところなどは見たこともないので、このリクエストには驚きました。
もしくは、抜刀隊だけに、このガンマナイフ治療に対して、なにか覚悟めいたものを感じていたのでしょうか。
治療が終わると、フレームを外して、固定していた部位の止血を行います。病室に戻り、点滴も行いました。
もの凄い音を聞いた(らしい)
治療そのものについては、もの凄い音を聞いたそうです。
ガガガガガガ!」という音がしたそうです。
しかし、ネットで調べてみると、ガンマナイフでは音は出ないとあり、真相は不明です。
前頭葉に腫瘍がありましたし、父の幻聴だったのかもしれません。
ただ、この音のことがとても印象的だったようで、ガンマナイフ治療以降、MRIなどを受けた時に音を感じると、「ガンマナイフをされたかもしれない…」などと言い出すことがありました。
よほど、この音のことが心に残っていたのだと思います。
3日目
退院の日です。
この日のことは、私は付き添ったわけではないので良く分かりませんが、とにかく、もともと入院していた病院に帰っただけです。
付き添う側として大変なことは、このガンマナイフ治療ができる病院が、国内にも限られているため、お見舞いに行くにも移動距離が半端ではなくなるということです。
おそらく、多くの人が、この移動距離の洗礼を受けるのではないでしょうか。
患者本人は、病院の車で運ばれていくだけなんで、ちょっとうらやましくもあります。
ガンマナイフの効果は
結論から言うと、ガンマナイフが、父の腫瘍に効いたと思えるようなことはありませんでした。
治療した直後は、すぐに成果は出ないと言われていたので、数カ月単位で変化が現れるものだと、首を長くして期待していました。
しかし、現在、治療から1年半が経過していますが、腫瘍はむしろ悪化しました。(ガンマナイフをしたから悪化したというわけではありません。)
ガンマナイフの成果を期待するには、父の腫瘍が大きすぎたのか、それとも、父の癌がガンマナイフの効果をしのぐほどに活発だったのか、理由はわかりませんがそういうことなのでしょう。
ただし、ガンマナイフをしていなかったらもっと悪化していたかもしれないとも考えられます。
それこそ、医師が告げた余命通り、半年で死んでいたかもしれません。
なんにせよ、外科手術よりはリスクがないので、やって損はないと思います。
おわりに
すでに外科手術を行っていた父にとって、ガンマナイフは最後の希望でもありました。
抗がん剤治療もありましたが、脳腫瘍にはあまり期待できないと言われていたので、このガンマナイフで成果を得られなければ、もう打つ手がありませんでした。
しかし、ガンマナイフによる劇的な効果は感じることができず、ここから、父の容態は少しずつ悪化していきます。
それでも、このときから1年半が経過した今でもなんとか生きています。
ガンマナイフのおかげで、なんとか寿命を延ばせたのかもしれません。
また、もし新しい脳腫瘍が出てきても、一度ガンマナイフを経験しているので、再びガンマナイフを受けることになっても何となく要領も分かっています。
初めての経験は、どういうものであっても大変ですからね。
全て、結果オーライです。