突然の腹痛
数年前、地方に就職していた私は、正月休みで久々に実家に戻りました。そして、やり残したことだらけの仕事はとりあえず忘れ、ゆっくりと年末年始を実家で過ごそうと思っていた矢先、突然、父が腹痛を訴え始めました。
父は、脂汗をかきながら、必死に痛みに耐えていました。もう、死んでしまうのではないかという思う程の苦しみようです。あまりにも苦しそうなので、救急車を呼ぼうとするも、かたくなに拒否されてしまう始末。
当時の父は、大の病院嫌いだったんです。以前、尿路結石になったときも、地獄のような苦しみの中、病院にも行かずに耐え抜いたほどです(痛みが治まった後に病院に行って尿路結石だったとわかりました)。
救急車を呼びたがらない父
夜中だったということもあり、救急車がくるのも近所迷惑になると思っていたそうです。しかし、あまりにも辛そうなので、私自身も動揺し始め、とにかく必死で病院に行こうと説得しました。
救急車の代わりにタクシーを呼び、それで救急外来に連れていくこと提案すると、なんとか同意してくれました。
救急外来
私は父に同行しました。タクシーで救急外来に行って初めて知りましたが、タクシーで行くのと、救急車で行くのとでは、大きな違いがあります。救急車で行けばすぐに医者に診てもらえます。
一方、個人的に病院に行くと、救急車で運ばれてくる患者が優先されてしまうようなのです。つまり、なんとか病院に到着しても、なかなか診てもらえないのです。父は、診察室の前で本当に苦しそうにしていましたが、なかなか父の順番が回ってこず、本当に大変でした。
父の死について考える
ようやく、父が診察室に呼ばれました。しかし、診察室に呼ばれれば痛みが引くわけではありません。ここでようやく、診察が開始され、レントゲンやらを撮ったりしはじめるのです。結果を聞くまでの間は、父だけではなく、同行した私にとっても、本当に長くて辛いものでした
「もしかすると、癌などの深刻な病気をわずらっているのではないか。」
ふと、今まで考えたこともなかったことが頭をよぎりました。よく考えてみると、この時こそ、生まれて初めて、父が死ぬかもしれないと真剣に考えた瞬間だったのかもしれません。
そして、これから、嫌という程に父の死について考え、悩むことになるのですが。
結果を聞くまでの時間は辛い
実際、父は、タバコは10年程前にはやめてはいたものの、それまでは1日にマイルドセブン(確かタールが12mg?)を2箱吸っていました。
私が小さいころには、それはもう、家の中は毎日煙で包まれていました。2箱だから40本、1本あたり5分間吸うとして、1日に200分もタバコを吸っていたということですね。時間に換算すると、3.3時間。煙だらけになるわけです。団塊の世代なので、あまり珍しい光景ではないのかもしれませんが。また、お酒も毎晩嗜んでおり、あまり健康的な生活習慣は送っていませんでした。
健康診断なるものを父が受けていた記憶は一切ありません。そのため、検査を受ければかならず何かが見つかるような気配はしていました。それだけに、診察結果を待つのは非常に辛いものがありました。
入院そして転院
結果としては、腹痛の原因は胆石であるということがわかりました。とりあえず、死を覚悟するような深刻な病気ではなさそうなので、ホッとしたことを覚えています。しかし、これはあくまでも救急外来による診察結果です。精密検査が必要だということで、翌日、別の病院へ転院することになりました。
とりあえずはホッとしたものの、精密検査が待っているので、まだまだ完全には安心できていなかったのは事実でした。なにしろ、健康診断など受けたことの無い父だからなおさらです。
いずれにしても、父の健康や死をこれほどまでに意識したのは、このときが初めてでした。夜中にタクシーで病院に行ったので、帰りは歩いて帰りました(これは救急車で行っても同じか)。寒かったなあ。