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【脳転移が発覚4】当時の父は何を思っていたのか

前回のブログより、父は肺がんの転移性脳腫瘍を発症していること、また、その状態は非常に深刻で、すぐに手術をしなければならないと告げられました。

この日のことは、今でも忘れていません。

父に脳腫瘍があるという宣告を受け、軽い貧血のような状態となってしまい、頭がボーッとして医師の話をしっかりと聞けていなかったのは事実です。しかし、この日が辛い日だったということだけは、しっかりと覚えています。

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帰り道で涙

この日の診察は、私のスクーターで2人乗りして病院に来ていました。スクーターは、どこでも停められるし、細い道も走れるし、50cc以上なら2人乗りもできるし、とにかく、病院に来る際にもいろいろと便利なんです。

そのスクーターに乗っての帰り道、流石に病院ではいろいろありすぎたのか、いろいろ思い出しているとドッと疲れが出てきました。運転しだすと、いつも何故かいろいろと考えてしまうんです。

がんの宣告はもちろんショックでした。しかし、父が危険な状態にあることも非常に辛いものがありました。

また、診察前にも、変わってしまった父の異常な行動に、病院内で相当に振り回されてしまいました。一緒に外に出てから初めて気付く父の変貌ぶりに、診察を受ける前から相当に困惑してしまっていたのです。(※詳しくは、以下のリンク先の記事をご参照ください。)

【脳転移が発覚2】改めて痛感した父の異常行動
前日の、脳腫瘍が発覚した診察について書いたブログの続きになります。簡単に概要を説明すると、肺がんの手術をしてから約1年半が経過した頃、私は、父の行動が変わりはじめていたことを危惧していました。そこで、肺がんの定期検査の日に、父に...

スクーターを運転しながら、「父の状態はこうしている間にも確実に悪化している」、「以前のような、頼りがいのある父にはもう二度と戻らない」、「ステージ4で数カ月の命」「手術次第では2週間弱しか生きられないかもしかない」などと、いろいろなことを考えていると、突然涙がでてきました。

バイクの後ろには父がいるので、泣いているところ見られないようにしました。泣きながらバイクに乗ると、涙が後ろに飛んでいくので、父の顔に当たるのではないかと結構気を使うのです。

しかし、父は運転している私に対して突然に、

「悪いなあ…」

と言ってきました。

それまで、何も言わずに後部座席で静かに座っていたので、本当に驚きました。

ミラー越しから私の顔が見えて発した言葉なのか、なんとなく発した言葉なのか。真相は不明です。

この時の父は、まだ考える力もかなり高かったので、私の後ろ姿の様子からでも、何かを感じとったのかもしれませんね。とにかく、悲しい帰路でした。

家に帰ると、さすがに私の脳みそも疲れてしまい、少し寝てしまいました。そして、気を取り直すと、母親に今日のことを説明し、遠方に住んでいる兄妹にも連絡して状況を伝えました。

いろんな人に何度も同じことを説明するので、なかなか疲れました。診察に同行すると、こういった疲れもあるんです。

父については、いつも変わらない様子でYouTubeを見たりして過ごしていました。患者ではない私だけが疲労し切ってしまっている状態です。

脳腫瘍のために事態の深刻さ理解できていないのか、それとも年の功による精神的強さがあるのか。もしかすると、平静を保つようにしていたのかもしれません。いずれにしても、父は強いです。

家族が集まる

手術をすれば、以前と同様に父と会話ができなくなる可能性もあるということで、遠方に住んでいる私の兄妹やその家族も我が家にやってきました。

私の兄妹は、以前とは異なる父の様子にすぐに気づきました。やはり、様子の変化は、普段接していない人の方がすぐに気付きます。それとも、私がただ鈍感なだけなのか。

この日は、みんなで夕食を一緒にとりました。この時の様子は、ビデオにも撮っていました。ときどき見返すのですが、この時の父は、手術前で大きな腫瘍を2つも抱えていたとはいえ、非常に元気そうでした。あと数カ月の命を宣告された人とは思えません。

会話も違和感なく行えていました。ちゃんと筋道立てて考えて発言できていますし、質問に対する反応速度も健康な人そのものです。

この日から、症状はどんどん悪化し、ほとんど反応しなくなってしまいます。そんな姿と、ビデオの中の父を比べると、天と地ほど差があります。

今の私からすれば、ビデオの中の父はまだまだ十分に元気なのに、なぜ当時の私はこれほどまで落ち込んでいるのかとさえ思ってしまいます。私も、多少は強くなれたということなんでしょうか。

いずれにせよ、ビデオの中の当時の私に、症状が悪化した後の父の様子を教えることはできませんね。メンタルの弱さにとどめを刺してしまいます。

おわりに

肺がんの脳転移の宣告を受けた時は、診察に同行した私でさえ、大きな衝撃を与えました。

今後のことが不安になり、とても立ち直れそうにないほどのダメージを受けていたのだと思います。涙を流してしまったのも、本当に久しぶりで、もしかすると10年ぶりくらいだったかもしれません。

「父はもうすぐ死ぬかもしれない」とすぐに考えてしまい、その日以降は、仕事中でさえも、全く集中できなくなってしまうほどでした。

しかし、不思議なもので、そういったダメージは、月日と共に癒されていきます。

今でこそ、懐かしく思える当時の記憶ですが、この経験が糧となって、さらに悪化していく父の容体にも直視できるようになっていったのだと思います。

辛い経験はできればしたくないものです。しかし、直面してしまった以上、たとえ時間がかかろうとも、建設的に捉えていくしかありませんね。