肺がんの脳転移による悪性脳腫瘍を抱えた父は、無事に手術やガンマナイフ治療を終えました。
脳腫瘍によって、手術前から、これまでとは明らかに違う父の行動に驚かせられ、ショックを受けてきました。
しかし、手術後になると、手術前とはこれまた違う行動を示し始めるようになりました。
前回のブログで書いた、病院から無意味に抜け出そうする行為も術後に現れた現象の一つです。
他には、霊現象的なことも度々口にするようになりました。
今回は、そのことについて書いていこうと思います。
ICUで女の子の叫び声を聞く
父は、小脳と前頭葉に腫瘍を抱えていました。
そして、最初に行った小脳の手術を終えた後、合併症の脳内出血が発生しています。
いっときは、そのまま亡くなってしまう可能性さえもありました。
そのため、術後しばらくはICUにいることになりました。
ICUであってもお見舞い行くことはできました(ただし面会時間はかなり限られている)。
術後から何日か経った頃に父に会いにいくと、なんと女の子の泣き叫ぶ声がずっと聞こえていたというのです。
あまりにもうるさくて、全然眠れなかったそうなのです。
ICUなので、もしかしたら、急病の女の子が運ばれて来たのかもしれません。
しかし、警察も捜査でICUに来ていたというというのです。
女の子叫び声の件で捜査に来ていたのだろうと推察していました。
話はそれっぽいんですが、どうにも信じられません。
そもそも、警察がICUにまで入ってくるものなんでしょうか。
警察や病院については詳しくないので絶対にあり得ないと言い切ることはできませんが、とにかく父は本気でした。
霊の存在を示唆する
さらに、女の子の叫び声は、霊の仕業なのかもしれないと言い出したのです。
女の子が、事故か何かにあってICUに運ばれ、そのまま亡くなってしまったものの、今でも霊となって彷徨っているのだろう言っていました。
父はもともと、非現実なことはあまり言わない人だったので、このような発言をしたことには正直驚かされました。
霊現象ならば証明のしようはありません。
しかし、実際のところは、父は脳腫瘍やそれに伴う手術によって幻聴を聞いていたのだと思います。
前頭葉の腫瘍が影響しているのだと思いますが、この頃の父は幻聴を聞くようになっていました。
明らかにおかしいと思ったのは、ガンマナイフ治療を受けた時です。
治療中は音が出ないはずなのに、「ガンガンガンガン!」と激しい音を聞いたと言うのです。
耳からの情報しか得られない
警察が来たとかも言っていましたが、そもそも、ICUでは、父は寝たきりです。
さらに、ベッドはカーテンで区切られているので、誰かが室内に入って来ても顔や身なりを確認することはできません。
耳から聞こえてくる情報のみで色々な想像を脳内で作り上げていたのだと思います。
ここに、幻聴が加われば、想像できることはさらに増えるでしょうし、幻聴が聞こえていることさえも分かっていなければ、その想像を信じ込んでしまいます。
霊力を手に入れたのか?
もちろん、病院には亡くなられたたくさんの霊がいるとも言われているので、本当に霊体験をしたのかもしれません。
合併症で死にかけたので、死線を潜ることで霊的なものを感じ取る力を手に入れたのかもしれません。
しかし、夢の無い話になりますが、どう考えても、脳腫瘍を原因とする幻聴を聞いて、それを材料に想像を作り上げていたとしか考えられません。
おじいさんの霊が現れる
ICU以外でも霊に関する話はしていました。
父は、小脳と前頭葉の手術を無事に終え、ガンマナイフ治療も終えた後は、一般病棟に移されました。
その一般病棟でも、霊がよく出ていたと言うのです。
そこでは、お爺さんの霊が頻繁に現れていたそうです。
その霊はいつも廊下の同じ場所にいて、時々姿を表すのだそうです。
頻繁に、その霊を見た看護師さんが悲鳴をあげ、他の看護師が「また出たのか!」と言っていたそうです。
いつも叫び声を聞く
本当に出るのであれば怖い話ですが、私はどうにも信じられませんでした。
何より、父がその霊を見たわけでは無いのです。
ICUと同じく、基本的には病室にて、カーテンで仕切られたベッドで寝ているだけです。
全て、周りの音からの情報のみでできた話です。不思議なのは、父の霊体験は、いつも叫び声が出てきます。ICUでの女の子の声もそうです。
そういった叫び声の幻聴を聞くようになっていたのではないかと思うです。
「また出たのか!」という他の看護師の声などの真相は不明ですが、叫び声の幻聴から付随した追加の幻聴だと私は考えています。
父の気持ちは分かる
色々と想像を膨らませてしまう気持ちは、なんとなくわかります。
実際、寝たきりになってしまうと、聞こえてくる音だけが頼りです。
脳腫瘍が無い私でさえも、父のように確信してしまうことはないにせよ、聞こえてくる音からさまざまなことを想像してしまうと思います。
例えば、いつも夜なると聞こえてくるうるさいバイクの音からでも、バイクの形や乗っている兄ちゃんの姿を勝手に想像してしまっています。
父の場合は、脳腫瘍を抱えていたので、作り出される想像とその妥当性の処理がうまくできなくなってしまっていたのだと思います。
ここに、幻聴も加わってくるので、話はさらにややこしくなってしまい、父の非現実的な話を聞かされる私達家族は混乱してしまっていたのだと思います。
おわりに
父が語る霊現象についての話を聞くうえ、とても後悔していることがあります。
それは、父の話を全く信じてあげられなかったことです。
あまりに非現実的な話なので、ついつい否定することしかできなかったのです。
しかし、たとえ脳腫瘍が影響していたとはいえ、父は事実だと信じていたので、こちらもちゃんと真剣に耳を傾けてあげられればよかったと思っています。
もしかすると、本当に女の子やお爺さんの霊が出てきていたのかもしれませんしね。