ここしばらくのブログの内容は、肺がんの脳転移手術後に現れた父のおかしな言動について書いてきました。
まとめてみると以下の通りになります。
共通していること
やはり、叫び声といった騒音に関することが多いですね。
そして、それがうるさくて眠れないといったかとをよく訴えていました。
具体的には、ICUで聞いた女の子の霊の叫び声から始まりましたが、一般病棟に移ってからも、隣の患者にお見舞いに来た人が犬を連れてきた、赤ん坊が泣いていた、などです。
どれも、現実には起こり難いことですし、なぜそういったことを感じるようになったのかは不明ですが、脳腫瘍が影響を与えている可能性はかなり高いと思います。
とくに、前頭葉にできた腫瘍が、幻聴を作り出しているのではないでしょうか。
さらに、幻聴を事実だと信じ込み、そこから勝手に色々な想像を作り出してしまいます。
これには本当に困りました。非科学的なことはあまり信じることは無かった父が幽霊の存在まで口にし出すので、これについては多少なりともショックは受けました。
脳腫瘍ができておかしな言動を示すようになり、手術を受けてさらにその言動は顕著になってしまったので、このままでは、今後いったいどうなってしまうのだろうかと不安になりました。
認知症等とは違う
私は、父の症状はただ悪化していくものだと思っていました。
アルツハイマー型の認知症を抱えた方が家族にいる知り合いがいたこともあったのか、父も同じような道を辿っていくのだと勝手に思っていました。
しかし、父は脳腫瘍です。前頭葉の腫瘍については取り除くことができませんでしたが、これ以上に腫瘍が悪化しなければ、父の症状も悪化することはありません。
※前頭葉の手術の時のブログは以下をご覧ください。
なにより、手術後ということもあり、父の脳は一時的に大きなダメージを受けていました。
脳内出血の合併症も併発しました。こういったこともあり、父の容態は一気に悪化してしまったのです。
この辺りのことを、私は完全に忘れてしまっており、父は容態やおかしな言動などは、ただ悪化していくものだと思っていました。
余命半年と言われていましたね。
とにかく、この時は、手術が無事に終わったにもかかわらず、私の心境としてはかなりネガティブなものになっていました。
脳の外科手術後の容態悪化は一次的な場合もある
手術後に様子がおかしくなった父ですが、しばらくするとかなり回復していきました。
とくに、以下の2つは回復を促す大きな要因になったと思います。
①寝たきりからの復活
手術が終わってしばらくすると、リハビリが始まりました。
小脳の腫瘍摘出が影響していたのか、最初は体を起こすことさえ自力でできませんでした。歩くことももちろんできません。
しかし、少しずつリハビリを重ねていくうちに、よろめきながら数メートルですが、何とか歩くことができるようになりました。
小脳の手術でどれだけの後遺症が残るのか非常に心配でしたが、自力歩行ができるようになるまで回復するとは夢にも思っていませんでした。
さらに、この歩行能力の回復に比例するかのごとく、虚言ともいうべき奇妙な言動も収まり始めました。理由はわかりませんが、やはり筋肉を使うことで脳が刺激を受けるのだと思います。
もちろん、手術時に発生した浮腫などが時間の経過とともに落ち着き出したことも大きな理由だと思います。
いろいろな要因が重なったとは思いますが、体感的に、寝たきりだった状態と、ベッドから降りてからの状態を比較すると、父の回復傾向は格段の差がみられました。
②退院すれば容態は一気に変わる
もう一つ、父が一気に回復することになった分岐点があります。それが、病院から出たことです。
やはり、病院にずっといると、人間はダメになっていくような気がします。
リハビリ等があるといっても、基本的にはほとんどベッドの上にいます。時間が来れば勝手に食事は運ばれてくるし、お風呂にも毎日入るわけでありません。
オムツを履いていれば、トイレに行くことさえありません。世界の全てがベッドの上だけになってしまいます。
そのため、父はテレビを見ているか、ただ天井を眺めてばかりいました。
私達家族もできる限りお見舞いには行っていましたが、ずっと話し相手がいるわけはありませんしね。
しかし、家に戻るとそうはいきません。
ご飯を食べる時は食卓に行かなければなりませんし、テレビを見ている時も、家族の誰かと一緒に見ます。動けるようになってくれば、行動範囲も増えて、自分でトイレに行き、風呂にも可能な限り自力で入るようになりました。病院のように至れり尽くせりの環境ではないんです。
主に母親ですが、話し相手が常にいるということももちろん大きなポイントです。
病院、とくに脳外科では、病室内の人たちと交流するということも全く無かったようです。
これは、病院の雰囲気によって大きく変わってくると思いますが。
いずれにせよ、術後に悪化した父の容態は、以上の2つの要因によって大きく改善されました。
一時的だったとはいえ、訳の分からないことを言い出した時は本当に不安だったので、回復していると感じられた時は本当に嬉しかったです。
おわりに
知症と脳腫瘍は、脳に影響を与えるという点で、似たところがあるかもしれません。
しかし、脳腫瘍の場合は、腫瘍を取り除いたり、侵攻を食い止めたりすることで、症状の悪化はストップさせることができます。
ただし、回復については、術後すぐには著しい改善がみられたものの、完全に元に戻るということはありませんでした。
腫瘍によって圧迫されていた部分が緩和されれば、完全にとはいわずとも、「ほぼ完全」に戻るのではという僅かな期待をもっていたのですが、それは叶いませんでした。
おかしな言動は減少したものの、数字が苦手になったり、文字が書けなくなったりした後遺症は改善されませんでした。
歩行についても、走ることなどは到底できなくなってしまいましたので、完全回復ではないという点では同じです。
さらに、父について、小脳の腫瘍は完全に摘出できていたものの、前頭葉の腫瘍については「穿頭手術」という腫瘍を残す手術を行いました。
そのため、腫瘍は残ったままだったのです。
結果として、この腫瘍が悪化してまた父の容態にも影響を与えていくことになります。
脳腫瘍には、本当に悩まされます。