あけましておめでとうございます。
さて、挨拶も早々に唐突ではございますが、みなさんお酒は飲まれますか?最近、若者を中心に日本人のアルコール摂取量が減ってきている、いわゆる「若者の酒離れ」のニュースを聞いたことがあります。
しかし、父については、若者ではありませんが、肺がんの脳転移の症状がではじめると同時に、アルコールの摂取量が急激に増えていきました。
そもそも、脳腫瘍とアルコールの摂取量に関係があるのかと思われるかもしれませんが、父に至っては確実に関係していたと思います。
私とお酒(どうでもいい話)
ちなみに、私はお酒に弱いです。
仕事の付き合いなどで必要があれば飲みますが、家で飲んだりすることはまずありません。
飲んでいて、気分が良いと思ったことはありますが、美味しいと思ったことはありません。
嫌なこととかがあってもアルコールを飲むということもしません。
なにより、お酒を飲むと運転ができなくなるし、次の日にアルコールが残るとその日が台無しになるわで、良いことが全く感じられないのです。
そんな私ですが、学生時代は体育会系の部活に所属していたことから、飲まざるを得ない環境にいました。それはもう、毎日大変でしたよ。下級生のときは、お酒のせいで部活を辞めようと思っていたくらいでしたから。
でも、辞める勇気もないので、結局4年続けました(余談ですが、部活を辞める人は根性無しとか言われることがありますが、辞められる人ってかなりの根性の持ち主だと思いませんか?)。
そんな私でも、飲み放題の制限時間である2時間以内で、中ジョッキ10杯飲んだことがあります。これは唯一の自慢です。4年鍛えて、なんとかこれくらいは飲めました。今だと絶対に無理ですね。
とにかく、仕事など、特段の理由が無い限りお酒は飲みたくないのです。
とまあ、私についてのくだらない話は置いといて、当ブログの主題である、父の脳転移の前兆について述べていきたいと思います。
酒好きの父
私と違い、父はお酒の好きな人でした。
飲むときは飲みますが、基本的には自制していて、1日に缶ビール(発泡酒)2本ほどを飲むのが常でした。ときどき、それに加えてウイスキーを嗜む程度です。
ただし、毎日欠かさず飲んでいました。
アルコールに対しては、軟弱な私とは違ってそれなりに飲める口で、どれだけ飲んでも、吐いているところや、二日酔いになっているところを見せたことがありません。
もちろん、「父親」という体裁があるので、もしかすると、家族の前ではそういう姿を見せないようにしていたのかもしれません。いずれにせよ、無茶に飲むようなことは、普段はしない人でした。
酒の飲み方に変化がでる
常に、お酒は自制することを心掛けていた父でしたが、脳転移が見つかる数カ月前になると、その飲み方について大きな変化がみられました。
主に、以下のような変化がありました。
1.強い酒を飲むようになった
まず、ビールを飲まなくなりました。
その代わりに、ストレートの焼酎やウイスキーばかりを飲むようになったのです。
いきなりお酒の趣向が変わったので、私も心配になり、何かあったのかを聞いたことがあります。
父は、「ガツンとくるお酒を飲みたい」と言っていました。
2.飲む量が増えた
飲む量も著しく増えました。
ウイスキーのボトルは、一日で空けていました。
家には最低限のお酒しかストックしないようにしていたので、最高でもウイスキー1本で済みましたが、もし余分に置いていれば、あるだけ飲んでいたと思います。
とにかく無尽蔵に飲むため、本当に怖いくらいでした。
出費も大変でしたが、健康に害がでていないかが本当に不安でした。
3.昼夜構わず飲むようになった
夜でも昼でも関係なく飲むようになりました。
前回のブログで、終日YouTubeを見るようになったことを書きましたが、ウイスキーを飲みながら動画を見ていたのです。
仕事は引退していたものの、常に自制していた父が日中から飲みだすことには、さすがに違和感がありました。
当時は、脳転移を患っていることも知りませんし、何が原因でこうなってしまったのかが本当にわかりませんでした。
うつ病かアルコール中毒になってしまったのだと思っていました。
4.部屋で飲むようになった
飲む場所も変わりました。
これまでは、必ずダイニングでお酒を飲んでいました。
しかし、自分の部屋で飲むようになったのです。ウイスキーのボトルを部屋に持ち込んでYouTubeを見ていたのですが、これまで見たことのない父の行動に、何かがおかしいと強く思ったものです。
しかも、なぜかペットボトルにウイスキーを入れて飲んでいたのです。
これについては、父は「ビンだと落として割れてしまう可能性があるから」と言っていました。
一方、母親は「麦茶だと思わせるため」と言っています。いったいどちらが正しいのかは未だに不明です。
5.頭痛があっても飲み続ける
お酒を異常に飲むようになっていたころは、脳に転移したがんも活発に大きくなっていたのか、頻繁に頭痛を起こしていました。
その痛みは、相当な痛みだったと思います。
腫瘍が見つかる数カ月前になると、痛みのため、よく頭を抱えていました。
それでもお酒だけは飲み続けていたのです。むしろ、痛くなればなるほど、お酒の量は増えていたと思います。
頭痛の原因が脳腫瘍であったと分かる今では、まるで、脳内にある悪性腫瘍そのものがアルコールを味わいたいかのように、父にお酒を飲むよう促していたと思えるほどです。
禁酒を決意
以上のようなお酒に対する行動の変化があった父ですが、最終的には、耐えきれないほどの強烈な頭痛を訴えた直後、吐いてしまいました。
お酒の飲みすぎが原因で吐いたのか、脳腫瘍が原因で吐いたのかはわかりません。
とにかく、このときの父の苦しむ様は、言葉では言い表せない程に壮絶なものでした。相当な痛みが襲っていたのだと思います。なんせ、脳内にゴルフボール大の腫瘍を2つも抱えていたので、痛くないわけがありません。
私としては、お酒を飲んで吐く父を見たのは初めてだったので、それがとても衝撃的でした。
痛みは一晩して治まりました。しかし、さすがに私と母は異変を感じ、父にお酒を飲ませないようにしました。
父も、当時はすでに脳腫瘍を患っていたとはいえ、意思は固い人です。断酒を宣言し、それからは一切飲むことをやめました。
禁酒は禁煙よりも大変だと聞きます。実際、お酒を断ってから一年以上経過した今でもさえも、頻繁にウイスキーが飲みたいと言っています。
タバコなどとは異なり、これからもずっと、お酒を飲みたいという欲求は消えないのでしょう。それほどお酒が好きだった父が禁酒を決意するほど、当時の頭痛は強烈なものだったのです。
「うつ病」「認知症」「アルコール依存症」の可能性
結果として、強烈な頭痛の原因は、肺がんの脳転移によるものであったことが判明します。
当時の私は、父に脳転移が発生しているとは、微塵にも思っていませんでした。それよりも、うつ病、認知症、アルコール依存症になっていることを疑っていました。そう思って、父を病院に連れて行ったのです。
ただし、あのままずっとお酒を飲み続けていれば、アルコール中毒になっていたことは間違いなかったでしょう。
それに伴って、鬱病や認知症も結果的に発症していたと思いますし、体も潰れていたと思います。
父の飲酒習慣を変えた原因
そもそも、なぜ、父が飲酒をコントロールできなくなったか、今でも良く分かりません。
考えられるのは、以下の2つだと思います。
1.腫瘍そのものが引き金となった
まず考えられるのは、脳にできた腫瘍が、父の自制心を司る何かに影響を与え、際限なく飲ませるようにしてしまったことだと思います。
他人への気遣いを忘れない父が、周りを気にせず大音量でYouTubeを見たりするようになっていたので、この可能性は十分に考えられます。
おそらく、前頭葉にできた腫瘍が、なんかしらの影響を与えていたのだと思います。
2.腫瘍による機能低下が父の心に付け込んだ
一方、脳の腫瘍によって低下していく自分の体に異変を感じ、憤りを感じた末での飲酒だったのかもしれません。
すでにこの時には、原付のスタンドを立たせられず地面にへたり込んでしまったり、パソコンのタイピングができなくなったりしていたので、何らかの異変を感じていたと思います。
運動神経が良くて頭も切れる、何でもできる父だっただけに、身体能力が低下していくことは、脳腫瘍を抱えていたとはいえ、相当なショックだったと思います。
どちらにせよ、肺がんの脳転移が根本的な原因であったことは間違いないと思います。
脳腫瘍の悪化にアルコールは関係あるのか
脳転移が発覚してからの診察で、医者から「一滴もお酒を飲んでないのか?」と驚かれたことがあります。
確かに、医者からアルコールを飲まないようにと言われたことはありません。
アルコールを取ると、血流が増えて多少なりとも脳に影響がありそうな気もするのですが、どうやら、少しくらいなら飲んでも構わないようです。
しかし、少しでも飲んでしまえば、また、当時のように、際限なくお酒を飲み続ける父に戻ってしまうような気がしてしまい、父には飲ませることができませんでした。
また、一度断酒を決意した父の意思も固く、飲まないことに同意してくれました。
「禁酒」、「断酒」と、お酒を飲む習慣のない私がつらつらと簡単に書いていますが、当の本人にとっては本当に大変なことだと思います。
実際、父はアルコール依存症と診断されたわけではありませんし、多少のお酒なら飲んでも構わないのかもしれません。
それでも飲まないと約束し、それを継続しているのは、家族に迷惑をかけたくないという、父なりの決意があったからだと思います。
昔から、本当に美味しそうにお酒を飲む人だったので、このような決意をさせてしまったことには、本当に申し訳なさを感じてしまいます。
しかし、私たち家族としても、頭を抱えて苦しみながら、お酒を飲もうとする父の姿を見るのは、本当に辛いものがあったのです。
おわりに
家族の誰かが、突然に大量のお酒を飲みだしたりすると、健康状態が気になるどころか、呆れて物も言えなくなってしまうかもしれません。
実際、私も、父が昼間からウイスキーをペットボトルに入れ、YouTubeを見ながら自室で飲みだしたときには、心配すると同時に、多少の呆れがありました。
しかし、昼から酒を飲んでいるから「アル中」、と早合点せず、なぜそういった状況に陥っているのかを、あらゆる視点から見つめ、行動に移すことが重要だと思います。
全く予想もしていなかった原因があるかもしれませんし、もしかすると、私の父のように、脳に異常が出ているのかもしれないからです。
なにより、行動に移すことで、「もっと早くああしておけば」という後悔だけは、少なくできると思います。
私の場合は、脳転移だと分かってから、「確かにおかしいと思っていた」ということばかりで、なぜおかしいと思った時点ですぐに対処できなかったのかという後悔ばかりがあるためです。
そして、後悔しつつも、また同じようなことを繰り返してしまうのかもしれません。それくらい、異常に気づき、検査に行くという行動に移すことは難しいところがあります。
心配ばかりしていても仕方ありませんが、後悔のないようにしていきたいところです。